産業動物獣医師にとって、牛の妊娠鑑定や繁殖治療を行う上で、直腸検査は必須のスキルです。
とはいえ、産業動物獣医師になるまで、直腸検査はほとんど行ったことがなく、直検の技術を習得したのは仕事を始めてからでした。
『【繁殖検診/妊娠鑑定】コツを掴むまで難しい!新人獣医師が牛の直腸検査ができるようになるまで』でも書いていますが、直検の習得が一番苦労しました。
最初のうちは、1頭の牛に、10分も、20分も手を入れて、結局よくわからないという状態でした。
あの頃、練習させてもらった牛さんと、それに嫌な顔せず付き合ってくれた農家さんには本当に感謝一杯です。
そうして繰り返していくうちに、段々と直検の技術も上がっていき、昔と比べると早く触診ができるようになりました。
そこで今回は、
- 直腸検査を早く行うために大事なことは?
- 直腸検査が早い人と遅い人の決定的な違いは?
ということについてお話ししたいと思います。
もし今直検で悩んでいる人がいれば、是非最後までお読みください。
私は現在、北海道で、産業動物獣医師として働いております。
詳しくは、『【プロフィール】なぜ産業動物獣医師である私がブログを書いているのか?』をお読みください。
まずは直腸検査する時のルーティンを作ろう!
人によって、直腸検査のやり方や手順は異なると思いますが、それぞれルーティンを持っていると思います。
初めての頃は、なんとなく探っているうちに触れたということもあると思います。
でも毎回同じルーティンで触った方が、最初は時間がかかっても、結果的には早く触れるようになると思います。
例えばですが、
①子宮頸管をつかむ
②子宮体を触る
③右子宮角を触る
④右の卵巣を触る
⑤左子宮角を触る
⑥左の卵巣を触る
というようにルーティン化して触診した方が良いと思います。
これは直腸検査を行なっている腕も違うように、人によって様々です。
自分の合ったルーティンを作ってみると良いと思います。
直腸検査が早い人と遅い人の決定的な違いは?
では、直検が早い人と遅い人の違いはどこで生まれるのか?
私が直検に時間がかかっていた時に、どこで時間がかかっていたのかも含め、振り返ってみました。
①上手い人は直腸壁を緊張させない・刺激しない
時間がかかっていた時には、指をすぼめて直腸に手を侵入させたら、すぐに触診してやろうと指を広げていました。
この指を広げて触ろうすると、刺激が強すぎて、すぐに直腸壁が緊張してしまい、時間がかかっていました。
よく直腸検査は点ではなく、面で行うことで直腸壁を刺激することなく、触診しやすくなります。
直腸検査が早い人は直腸壁を刺激せず、直腸壁が弛緩していれば、その後すぐに触診できるため早いです。
②上手い人はガス抜き(糞かき)して、直腸壁を弛緩させるのが早い
上手い人は、直腸壁を刺激しないように手を入れても、直腸壁が緊張していれば、すぐにガス抜き(糞かき)を始めます。
便が緩かったり、下痢をしている牛は直腸壁が緊張している場合が多く、ガス抜きが必要なことが多いです。
ガス抜きの方法は、人によって異なると思います。
多くの人は直腸壁が収縮している奥までゆびや拳をかけて、肛門側に引っ張り、手前に貯留しているガスと便を排出することで弛緩させている人が多いと思います。
直腸壁が緊張しすぎて弛緩させることが難しい場合には、他の牛を診てからもう一度診ると直腸壁が弛緩し、診やすくなっていることがあります。
こういった判断も上手い人はとにかく早いです。
③上手い人は子宮を反転させたり、伸ばしたり、持ち上げたり自由自在
直腸壁が十分に弛緩した状態を作り出し、子宮の触診を始めます。
かなり丸まっている子宮や、骨盤の遥か下の方にだるんと下垂している子宮などそのままだと触診しにくい状態の子宮などもあります。
上手い人は自分が触診しやすいように子宮を反転させたり、持ち上げたり、伸ばしたりするのがとても上手いです。
こればかりは十分に直腸壁を弛緩することができれば、それほど難しくないと思うので、まずは子宮を弛緩させた状態で触診できるようになるのが先だと思います。
直腸検査の大部分は、直腸壁の弛緩(ガス抜き)に時間を使う
ここまで書いてきた通り、直腸検査が早い人と遅い人の違いの大部分は、直腸壁を弛緩させた状態にするのが上手いか下手かという違いです。
正直、直腸検査している時間の半分程度は、ガス抜き(直腸壁の弛緩)に時間を使っていると思います。
それ以外の子宮の触診や卵巣の触診して診断するまでの時間はさほど大きな時間の差はないと思います。(もちろん違いはありますが)
私も子宮の反転が上手くいかないと悩んでいる時期もありましたが、結局、直腸壁を十分に弛緩させられていなかったことが原因でした。
子宮の操作が難しいと感じたら、無理やり操作しようとするので余計に直腸壁に刺激が入ってしまい、より操作が難しくなります。
そのような場合には、腸管の収縮を待ったり、ガス抜きを十分に行うことで、操作しやすくなると思います。
もし直検で悩んでいる人の参考になれば幸いです。
『【繁殖検診/妊娠鑑定】コツを掴むまで難しい!新人獣医師が牛の直腸検査ができるようになるまで』をまだ読んでいない人はお読みください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また、『【新卒/1年目】産業動物獣医師の初任給を公開します【給料明細】』という記事では、産業動物獣医師の初給与についても公開しています。
『【新人獣医師・獣医学生必見】産業動物臨床獣医師におすすめの専門書/参考書【乳牛の勉強】』では、おすすめの参考書を紹介しています。