最近、新人獣医師、授精師、もしくは学生に直腸検査を指導することも多いです。

中には本当に直腸検査を数回しかやったことのない人、これまで子宮や卵巣を触れたことのない人もいます。

だいたい何頭かやってもらうと、『全然わからないです』『この牛は少し触れました』という反応が多いです。

正直なところ、このレベルでは、触れた人、触れなかった人で技術的な差はないと感じています。

”牛の肛門に手を入れた時に、その牛の直腸壁がたまたま緩んでいて、たまたま触れた”という人が触れているからです。

一方で、屠体の子宮であれば、直腸検査をしたことがない人であっても、実際に子宮頸管、子宮体、卵巣を自由自在に触ることが出来ます。

生体との違いは、”腸管越しに子宮を触る”という点だけです。

つまり腸管越しに子宮を触るとなると一気に難易度が上がり、直腸壁を十分緩ませなければ直腸検査上手に行うことが出来ません。

今回は、繁殖健診や妊娠鑑定のやり方ではなく、本当に初めて直腸検査を行う人が少しでも”何かしら触れるため”の方法を伝えようと思います。

直腸検査を行う前にまずは触りやすい環境を整えよう

そもそも初めて直腸検査を行う人は、スムーズに直腸検査を行うことは無理です。

そのため、まずは最も触りやすい状態を整えてから肛門に手を入れ始めましょう。

①まず背が低い人は台に乗ってから始める

基本中の基本ですが、肩より高い位置に肛門がある場合は非常に触るのが難しくなります。

必ず台の上に乗ってから始めましょう。

腕がだいぶ楽になると思います。

②自分の触りやすい牛で、直検手袋にローションはたっぷりと

そもそも体格の大きな牛、お尻が上向きについてる牛、またお尻を振るような神経質な牛は最初は避けた方が良いと思います。

また無理矢理手を入れようとすると牛は嫌がります。

直検手袋にはたっぷりとローションなどの潤滑剤をつけること。

そして、ポイントですが、”肛門周囲にもいっぱい手で潤滑剤をつけること”でスムーズに手を入れることが出来ます。

手だけに潤滑剤をつけてても、肛門の周りの皮膚と擦れて牛が意外と嫌がるんですよね。

③遠慮はしないこと、練習させてくれる農家でやる

とにかく最初は早くやるなんて無理です。

10分触っても何も触れない人も多いです。

どんな地域でも必ず新人を育ててくれる農家さんがいます。

なんか待ってもらうのも悪いし・・・と遠慮せず、たくさん練習しましょう。

勝手に練習してもいいと言ってくれたり、1時間でも、2時間でも付き合ってくれる農家さんもいます。

できるようになったら、技術で返せば良いのです。

直腸検査は直腸壁との戦いだ!少しでも子宮や卵巣を触ってみよう

冒頭でも話したように、直腸検査は直腸越しに触るのが難しいんです。

直腸壁を弛緩させた状態で触れれば、初めて直腸検査する人でも何かしらは触ることができるはずです。

話は少し逸れますが、新人研修時代に右けん部から試験的開腹をすることがありました。

腹腔側から手を入れた人と肛門から手を入れた人が直腸越しに握手して握れるほど、直腸壁って薄いんだということを学びました。

本当に直腸壁が弛緩していれば世界が変わります。

繰り返しになりますが、直腸壁が弛緩していれば、直腸検査はそれほど難しくないんです。

実際に直腸検査は平均すると1頭1分30秒〜2分ほどでこなしていくことが多いと思いますが、そのほとんどは腸管壁を弛緩させる作業に時間を当てています。

実際、卵巣を触ったりエコーを当てたりしている時間はほんの数秒です。

では上手い人は緊張している直腸壁をどのように弛緩させているのでしょうか。

①直腸壁を弛緩させるには、まず除糞とガス抜きをしよう

基本的に慣れていないうちは必ず除糞しましょう。

除糞と同時にガスも抜けて腸管壁が弛緩しやすくなります。

②除糞しても弛緩しない時には、腸を蠕動させよう

除糞してもいまいちガスが残っていて、十分弛緩しない時には腸管を蠕動させてガスを抜いてみましょう。

やり方は腕を少し奥まで入れて、腸管が窄んでいる少し奥に指をかけて手前に持ってくると同時にガスを抜きます。

引っ掛ける指は必ず”複数本”で引っ掛けるようにしましょう。

ゆーっくりと手前に持ってくるか、少しずつ前後に揺らしながら手前に持ってくると上手くいくと思います。

③直腸壁はなるべく刺激ないように、蠕動が来たらじっと待ってみる

まず指1本で何かを触ろうとすると刺激が強すぎて、腸管壁が緊張してしまいます。

なるべく指を揃えて、指先などで刺激を与えないようにしてみましょう。

また触れている時に蠕動が来たら無理に触らずにじっとそのまま待ってみるのも手です。

もし触れなくなってしまったら、もう一度①②からやり直してみてください。

直腸検査が上手くいかないのは直腸が緊張しているから

直腸検査が慣れない頃は、この牛は触れるのに、この牛は触れないということがあると思います。

基本的にどんな牛でも直腸壁が十分に弛緩していれば触ることが出来ます。

もし今直腸検査が上手くいかずに悩んでいるのであれば、まず直腸壁が十分に弛緩しているか確認してみてください。

もし緊張したまま触っているのであれば、十分弛緩するようにガス抜きをしたりしてみてください。

もし初めて直腸検査をして、何も触れなかったから自分は向いていないと落ち込む必要はありません。

今回書いたことを少しでも意識して、直腸検査の上達に役立てもらえれば幸いです。

ABOUT ME
とんち
当ブログを運営・管理している”とんち”です。 現在、北海道で産業動物臨床獣医師として働きながら、ブログを書いています。 詳しくは、『【プロフィール】なぜ産業動物獣医師である私がブログを書いているのか?』をご覧ください。