”牛の行動を観察しよう”とよく言われますが、牛の正常な行動・異常な行動について知っていますか?
私は現在産業動物獣医師として働いていますが、学生や獣医師として働きだした頃には牛の行動についてほとんど理解していませんでした。
よく先輩や農家さんにも”なんか変だよね”と言われても、いまいち何が異常なのかわかりませんでした。
そもそも牛の立ち方、歩き方、糞便の硬さなど、牛の基本的なことついて知っていませんでした。
漠然と観察していてはわかりませんし、言語化して教えてもらえる機会もそうありませんでした。
そこで今回は、牛の行動について、理解するのに非常に役に立った『COW SIGNALS―乳牛の健康管理のための実践ガイド』という本についてご紹介したいと思います。
現在、酪農は戸数減少、一戸あたりの頭数増加による大規模化!牛を観察する機会が減っている?
近年、酪農経営にかかる初期費用も増加傾向にあり、新規就農の際や牛舎の建て替えになると、80〜100頭牛舎を建てる酪農家がほとんどだと思います。
企業が経営する牧場では、いわゆるメガファームと呼ばれる数百〜数千頭規模の牧場も存在します。
今後経営合理化のために、大規模化は避けられないと思いますが、何も良いことばかりではないと感じています。
労力削減のため、多くの作業がロボットで行われるようになり、牛を観察している時間が圧倒的に少なくなっているように感じています。
私は獣医師なので、体調の優れない牛がいると往診をしますが、内心、今日見つけたけど結構前から悪そうだな…と思うことも少なくありません。
そしてそこで農家からの情報と言えば、
- 反芻量が落ちている
- 乳量が落ちている
- 乳質が異常だ
などデータから得られる情報ばかりで、食欲や糞便の状態と言ったことは見ていないのでわからないと言われることも多々あります。
また新規就農希望者・研修者や従業員からは『これは異常なの?』と聞かれることも多々あります。
そこで今回は私が牛の行動を観察し、理解するのに役立ったおすすめの本としてCOW SIGNALS―乳牛の健康管理のための実践ガイドという本を紹介します。
デーリーマン社出版 Jan Hulsen著 中田健訳 COW SIGNALS―乳牛の健康管理のための実践ガイド
この本は、オランダのヤン・ヒュルセン獣医師によってオランダ語で書かれていました。
その後様々な言語に訳されて出版され、日本語版は酪農学園大学の中田健先生によって英語版から翻訳されました。
そんなカウシグナルズの良いところ・いまいちなところについてお伝えしたいと思います。
カウシグナルズがいまいちなところ
理解するのがやや難解な日本語訳になっている
牛の分野に精通されている先生が訳されていますが、翻訳家ではないためやや難解な日本語訳になっている印象を受けました。
翻訳時に、内容・表現を変えないように正確に伝えるために、このような訳をされているのかとは思いますが、もう少し読みやすいように崩して書かれてある方が読み進めやすいのかなと感じました。
カウシグナルズの良いところ
カラーの挿絵や写真が豊富でわかりやすい
約250枚以上のカラーの挿絵や写真が使われており、視覚的にも非常に理解しやすくなっています。
また、破行スコア、蹄スコア、糞便スコア、乳頭スコアなどスコアごとにも写真が掲載されており、どこがどんな風に異常なのか一目でわかるようになっています。
平易な言葉で表現されていて理解しやすい
難しい専門用語はほとんどなく、大変理解しやすく、獣医師だけでなく、酪農家や新規就農希望者にも大変理解しやすい言葉で書かれています。
牛の行動について言語化されている
牛の行動のどこがどうなのか一つ一つ言葉で説明されており、カラーの挿絵や写真を交えながら説明文が記載されているので、とても理解しやすくなっています。
酪農家でも意外と知らない牛の行動について勉強しよう
獣医師であれば、毎日様々な農場に行き、いろんな牧場環境を見ることができますが、一方酪農家であれば、あまり他の牧場を見学機会も多くないと思います。
また普段の作業に追われたり、ロボットによる自動化に伴い、牛を観察する時間も少なくなってしまってるという人も多い感じます。
そんな人にぜひ一度『COW SIGNALS―乳牛の健康管理のための実践ガイド』を読んで、牛を観察しカウシグナルズをことおすすめします。
他にもおすすめの勉強本を『【新人獣医師・獣医学生必見】産業動物臨床獣医師におすすめの専門書/参考書【乳牛の勉強】』で紹介していますので、是非ご覧ください。
その他にも、獣医事に関しても紹介していますので、獣医師に興味のある人や目指している人の参考になれば嬉しいです。