動物は言葉を話すことはできません。
獣医師が動物を診察する際には、飼い主からの稟告を元に、視覚、聴覚、触覚、嗅覚など人間の感覚をフルに使い、診察している動物がどのような状態なのかを探っていきます。
その中でも聴診器を利用すれば、非侵襲的に、心音、呼吸音、消化管の状態といった重要な情報を知ることができます。
現場でも体温計と同様に肌身離さず持ち歩いており、臨床獣医師にとって聴診器は無くてはならないものです。
学生の頃は何となく聴診器を選んでいましたが、臨床に出てからこのタイプの方が使いやすいなという点もありましたので、産業動物臨床獣医師の立場からおすすめの聴診器についてご紹介します。
もし農家の方で聴診器を買ってみようという人も、ぜひこの記事を最後までお読みください。
この記事を読むことで
- どんな聴診器を選べば良いか
- それぞれの聴診器の良いところ・悪いところ
について知ることができます。
私は現在、北海道で産業動物獣医師として働いております。
詳しくは、『【プロフィール】なぜ産業動物獣医師の私がブログを書いているのか?』をお読みください。
獣医学生におすすめの聴診器
初めて聴診器を買うのは、動物病院やNOSAIなどの臨床実習に参加する際、もしくは大学の臨床系実習(ポリクリ)が始まる時期だと思います。
将来どんな道に進むか決めている人は、後で紹介する聴診器で自分に合ったものを選ぶのをおすすめします。
まだどんな道に進むか決まってない人は、次に紹介する3M™ リットマン™ ステソスコープ ライトウェイトシリーズを買っておけば間違いないと思います。
3M™ リットマン™ ステソスコープ ライトウェイトⅡ S.E.
3M™ リットマン™ ステソスコープ ライトウェイトシリーズは、基本的な聴診に使用可能な軽量モデルで、最もリットマンシリーズの聴診器では安価な聴診器になります。
安価と言えども、さすがはリットマン社製の聴診器。
小動物でも大動物でも十分に聴診器としての機能を果たしてくれます。
実際、臨床現場でもこちらの聴診器を使われているベテランの先生もいらっしゃいます。
私も学生時代に初めて購入した聴診器もこの聴診器でした。
他のリットマン社の聴診器と比べても、チェストピースがプラスチックで作られているため軽いのが特徴です。
獣医師は聴診器を持ち運ぶ機会が多いので、軽量だととても使い勝手が良いです。
どの聴診器を選べばいいのか全くわからないという学生はとりあえず3M™ リットマン™ ステソスコープ ライトウェイトシリーズを買っておけば、間違いありません。
産業動物臨床獣医師におすすめの聴診器
産業動物(大動物)で聴診の機会が多いのは、牛と馬だと思います。
正直に申し上げると、産業動物の場合はそれほど高性能な聴診器は必要ではないと感じています。
先ほど紹介した”3M™ リットマン™ ステソスコープ ライトウェイトシリーズ”でも性能面では十分です。
しかし、すでに産業動物獣医師に進むと決めているのなら、私は次に紹介する3M™ リットマン™ ステソスコープ マスタークラシックII™を強くおすすめします。
3M™ リットマン™ ステソスコープ マスタークラシックII™
3M™ リットマン™ ステソスコープ マスタークラシックII™は、持ちやすい薄型チェストピースなので、狭くて聴診野に当てにくい場合に使いやすいです。
大動物の場合は、基本的に聴診時には起立している状態で聴診する機会がほとんどであり、特に心音を聴取する場合には前肢と胸部の間に聴診器を滑り込ませなければならないため、この薄型チェストピースのマスタークラシックⅡは大変使いやすいです。
大動物臨床に進むことを決めている人は3M™ リットマン™ ステソスコープ マスタークラシックII™を購入することを強くおすすめします。
3M™ リットマン™ ステソスコープ マスタークラシックII™ロングモデル
こちらは先ほど説明したマスタークラシックⅡのロングモデルになります。
通常のモデルは聴診器の長さが68cmなのに対して、こちらのロングモデルは81cmあります。
大動物は体が大きく、小動物を聴診するようには動物を動かすことはできないため、自らが動いて聴診する必要があります。
また聴診者の身長が高いと、聴診野までの距離が長くなるため、屈んで聴診する必要があります。
このことから身長が高い人は必ずこのロングモデルを購入することをおすすめします。
私自身このロングモデルを使用していますが、大変使いやすく、腰への負担も激減しましたのでとてもおすすめの聴診器です。
小動物臨床獣医師におすすめの聴診器
私は大動物臨床獣医師なので、正直小動物の聴診器のことはそれほどわかりませんが、小動物臨床に進んだ友人に聞いたおすすめの3M™ リットマン™ ステソスコープ マスターカーディオロジー™をご紹介したいと思います。
3M™ リットマン™ ステソスコープ マスターカーディオロジー™
3M™ リットマン™ ステソスコープ マスターカーディオロジー™はリットマン社の聴診器で最上位機種であり、聴診性能は最も優れています。
小動物の心音はとんでもなく早く繊細なため、それに応じて聴診器も性能の優れているものが望ましいようです。
私もこのモデルを先輩から借りて牛を聴診してみましたが、大動物ではそこまで性能の違いを感じることはできませんでした。
小動物の場合、子犬や子猫の心雑音の聴き逃しはその個体の予後に大きく関わってくるので、やはり高性能の方が望ましいということでした。
高性能なため高価ですが、3M™ リットマン™ ステソスコープ マスターカーディオロジー™ならなんでも対応できるので、後々高性能なものを買うのならば、最初からを買うのも良いかもしれませんね。
聴診する際に最も大切なこと
ここまで聴診器に関して、ご紹介してきましたがいかがだったでしょうか?
臨床獣医師として無くてはならない聴診器ですが、聴診する際に最も大切なことは使い慣れた聴診器で毎回同じルーティンで注意深く聴診をすることだと思います。
最初に自分に合った聴診器を選ぶことで、しっかりと聴診できれば良いですよね。
参考になれば嬉しいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
『新人獣医師・獣医学生必見】産業動物臨床獣医師におすすめの専門書/参考書【乳牛の勉強】』では、私が実際に産業動物獣医師として働く上で参考になった専門書を、紹介しています。
『【新卒/1年目】産業動物獣医師の初任給を公開します【給料明細】』という記事では、産業動物獣医師の初給与についても公開しています。