産業動物臨床獣医師の仕事といえば、『乳牛はじめ、肉牛、馬、豚、鶏などの家畜の診療ならびに疾病の予防、飼養衛生管理の指導などを行う』と説明されることが多いと思います。
このような表現が最も端的に産業動物臨床獣医師の仕事を表しているのかもしれませんが、産業動物獣医師である私ですら、この説明では仕事の中身や様子を想像することが難しいです。
ましてや獣医師を目指す高校生や獣医学生はおろか、普段から産業動物獣医師と関わりのある酪農家であっても、この言葉だけで産業動物獣医師の仕事を想像できる人は少ないと思います。
そんな産業動物臨床獣医師の仕事をとてもわかりやすく描かれているのが、今回ご紹介したい『獣医さんのイタい恋』と言う本になります。
- 産業動物臨床獣医師の仕事に興味がある
- 将来、獣医師になりたい
- 酪農関係の仕事に就きたい・就いている
と言う人は今回紹介する『獣医さんのイタい恋』をぜひ一度読んでみてください。
現在、私は北海道で産業動物獣医師として働いています。
詳しくは、『【プロフィール】就職で北海道に!とんでもない田舎だった…』をお読みください。
産業動物臨床獣医師(家畜診療所)の日常がこれほどリアルに描かれた本は他にない
まずこの本を読んでいる時、情景がサッと頭の中で広がりました。
朝の往診の電話の受付から診療所の雰囲気
乳房炎、蹄病、繁殖障害、第四胃変位、難産、子宮脱、子宮捻転、帝王切開…などよくある疾病
どこの地域にもいる癖のある農家
そこで奮闘する新人獣医師から中堅獣医師、定年間近のベテラン獣医師
その日常で繰り広げられる様々な人間関係と恋心を中心とした心理描写まで
これはもう産業動物臨床獣医師の私からすると、本当に日常そのものでした。
この本は、千葉NOSAIの清水秀茂さんと言う現役の獣医師が書かれたというのでそれもそのはずです。
小説ではありますが、産業動物臨床獣医師の仕事がここまでよくわかる本はないと思いますので、まだ読んだことのない人は『獣医さんのイタい恋』を是非読んで見てください。
獣医師になりたい高校生にもおすすめの本
獣医師の仕事を紹介されているものも多いですが、その多くが表面的なものであったり、想像的なものであったりすることも少なくないと思います。
この獣医さんのイタい恋では、表面的な綺麗なことだけではなく、本当にリアルが書かれています。(ただし作中に登場するほどの癖のある農家はあまり多くはありませんが)
どの仕事もそうですが、仕事で最も頭を悩ませるのは人間関係だと思います。
そんな人間関係の中で湧き起こる、喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、悩み、様々な感情についても詳細に描写されているのがとてもよかったです。
この本を読むと最初は獣医さんは大変なんだなぁと感じる人も多いかもしれませんが、良くも悪くも家畜の獣医さんの日常を知れるとても良い本だと思います。
是非、獣医師を目指されている高校生にも読んでもらいたいと思いました。
現役の産業動物獣医師にも是非読んで欲しい一冊
地域、組織などによって多少の違いはあれど、産業動物獣医師の現場での空気感やそこで繰り広げられる人間関係に関して、ほとんど同じなんだなと何度も頷きながら読み終えることができました。
そして先輩の男性獣医師と後輩の女性獣医師との恋愛小説にもなっているのが、またより一層リアリティがあり、面白く読み進めることができました。
まだ現役の産業動物獣医師の方で読まれていない人は是非読んでもらいたいと思います。
獣医師を目指す人に仕事や雰囲気について知ってもらいたい
獣医師を目指す人が少しでも獣医師の仕事や雰囲気について知ってもらえればと思い、今回は現役の産業動物臨床獣医師が書かれた『獣医さんのイタい恋』と言う本をご紹介しました。
他にも獣医師の仕事に関することも記事にしていますので、少しでも獣医師の仕事に興味がある人の参考になれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。