「【2024年】第76回獣医師国家試験の概要とその勉強法ついて考えてみた Vol.1」という記事では、日程や合格基準など獣医師国家試験の基本的な事項について説明しました。
「【2024年】第76回獣医師国家試験の概要とその勉強法ついて考えてみた Vol.2」という記事では獣医師国家試験の出題傾向、そして国試勉強の開始時期や使用する教材について説明しました。
「【2024年】第76回獣医師国家試験の概要とその勉強法ついて考えてみた Vol.3」では、「勉強の進め方」について、実体験を踏まえて出来る限り詳細に書いていますので、ぜひこちらもお読み下さい。
まだ読まれていない方は先に呼んでくださいね。
ここでは、「各科目ごとにどのように勉強したか」について書いてみました。
ただし大前提として、各科目の勉強は過去問をベースに勉強しました。
その上で書いてみましたのでよろしくお願いします。
またこの記事は長いので、気になる教科だけ読むことをお薦めします。
私は第71回獣医師国家試験に合格し、現在は産業動物獣医師として働いています。
詳しくは、『【プロフィール】なぜ産業動物獣医師である私がブログを書いているのか?』をお読みください。
獣医内科学・外科学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
- 北大まとめ
- 出題者の昔の対策講義プリント
傾向と対策
出題数は、94/330問(28.4%)と最も多い科目です。
内科学・外科学と記述していますが、勉強時には大動物と小動物に分け、小動物の消化器、泌尿器などの分類で勉強したので、その中で内科的治療は〇〇、外科的治療は〇〇といった形で学習を進めました。
大動物は小動物に比べ、比較的細かい内容は聞かれないので、得点源になると思います。
一方、小動物臨床の先生は自分の好みによって、講義内容や出題内容が偏ることもあります。
私自身臨床系科目が得意でなかったことから、大学の対策講義プリントを中心に利用し、まずは最低限知っておかなければならない内容について理解しました。
内容が足りないもの、偏っているものについては、北大まとめで随時内容を補って勉強を進めました。
よく出題されている知識を理解した後に、余裕があれば、国試出題者名簿を見て、小動物出題者の昔の講義対策プリントや参考書を手に入れ勉強するのも一案です。
獣医公衆衛生学
使用した参考書
- 北大まとめ
- 獣医公衆衛生学Ⅰ・Ⅱ(文英堂出版)
傾向と対策
出題数は、33/330問(10.0%)ととても多く、増加傾向にある科目です。
出題範囲が広く、聞いたことのない内容も出題されるため、高得点を狙うのは難しいですが出題数が多いのでしっかり対策したいですね。
中でも環境衛生は全く聞いたことがない出題が多く、内容もあまり面白くないので勉強がしんどい印象です。
公衆衛生学は考えている以上に時間がかかるので、予め余裕を持って対策することをおすすめします。
獣医病理学
使用した参考書
- 北大まとめ
- 動物病理学総論(文永堂出版)
- 動物病理学各論(文永堂出版)
傾向と対策
出題数は、21/330問(6.3%)ととても多くの問題が出題されています。
国試対策に関しては、「総論」のみでなんとかなります。
私自身、病理をずっと避けてきたので何もわからなかったですが、北大まとめの総論を読み込めば何とかなりました。
正直、最後まで画像問題はあまり分からなかったので、文章と他の分野の知識で答えていました。普段から見ていないと組織像で判断するのは難しいと思います。
病理を勉強すれば他の多くの分野もカバーできるので、最初は辛くても後の勉強がグッと楽になりますよ。
獣医寄生虫学
使用した参考書
- 北大まとめ
傾向と対策
出題数は、19/330問(5.7%)ととても多くの問題が出題されています。
得点源の科目ですが、中には難易度が高い問題や全く知らない問題も出題されています。満点を狙うのは難しいという印象です。
寄生虫は覚えても1週間もすれば忘れてしまうので、2回ほど覚え、直前期にもう1度覚え直すというやり方で記憶しました。
本番で完璧に覚えておけば良いと考えていました。そのため、直前期までやらなかったので不安でしたが、私はこの方法で上手いことできました。
獣医伝染病学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
- 北大まとめ
- 動物の感染症(近代出版)
傾向と対策
出題数は、19/330問(5.7%)ととても多くの問題が出題されています。
主に法定伝染病、届出伝染病の中で重要性が高く、特徴を有する感染症が出題されます。つまり、有名な感染症、問題となっている感染症が繰り返し出題されており、他の感染症と鑑別できるよう覚えることが重要です。
先に、細菌学、ウイルス学を勉強してから取り組むと覚えることはそれほど多くなく、スムーズに進められるのでおすすめです。
獣医生理学
使用した参考書
- 北大まとめ
- 生理学テキスト(文光堂)
傾向と対策
出題数は、18/330問(5.4%)ととても多くの問題が出題されています。
よく出題される内容も多くありますが、中には知らない問題も出題されています。
やはり生理学は多くの分野の基礎であり、最初に勉強することで他の分野の理解に役立ちます。
また他の分野を勉強した後に、再度復習するとさらに一層理解が深まり勉強が楽しくなります。
私自身も生理学から勉強を始めましたし、悩んでいる方は生理学から勉強されるとよいと思います。
獣医生化学
使用した参考書
- 北大まとめ
傾向と対策
出題されても数問だけとかなり少ない出題数です。
糖、脂質、蛋白質などの栄養素の代謝に関して最低限整理できていれば、問題無いと思います。
様々な糖の代謝回路など細かいところまでは覚えませんでした。
獣医薬理学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
- 獣医薬理学(近代出版)
傾向と対策
出題数は、18/330問(5.4%)ととても多くの問題が出題されています。
まずは薬物名、作用機序、主作用を覚えることが重要で、やはり得点しやすく、できれば満点を取りたい科目です。
寄生虫と同様に、覚えても1週間もすれば忘れてしまうので、2回ほど覚え、直前期にもう1度覚え直すというやり方で記憶しました。
本番で完璧に覚えておけば良いと考えていました。そのため、直前期までやらなかったので不安でしたが、私はこの方法で上手いことできました。
獣医繁殖学
使用した参考書
- 北大まとめ
傾向と対策
出題数は、16/330問(4.8%)と多くの問題が出題されています。
よく出題される内容を定まっているので、得点しやすい科目です。(ただし曖昧な問題(悪問)も多い印象です)
性周期に関連した繁殖障害や発情•排卵の同期化についてはよく出題されますがややこしい内容でもあるので、一度よく理解している人に教えてもらうのも一案です。
獣医解剖学・組織学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
- 出題者の昔の対策講義プリント
傾向と対策
出題数は、15/330問(4.5%)と多くの問題が出題されています。出題範囲はとても広い上にかなり細かな内容まで問われます。
難易度は高いですが、出題数が多く、A問題の一番最初に出題されるので、ある程度正答したいですね。
出題されやすい内容を覚えるだけでも大変ですが、余裕があれば出題者の昔の対策講義プリントを利用するのも一案です。
深追いせず、出題されやすい内容だけ勉強し、それで解けなかったら仕方がないというスタンスが一番良いと思います。
家畜衛生学
使用した参考書
- 北大まとめ
傾向と対策
出題数は、11/330問(3.3%)と一定数出題されており、出題範囲は広いです。
家畜飼養衛生、家畜環境衛生ともに満遍なく出題されるが、何度も出題されている問題も少なくないので全体的に目を通しておく必要があります。
植物毒はポツポツと出題されているものの、問題も難しくコスパも最低なので余裕のある人だけで大丈夫だと思います。
私自身、1日目の試験が終わったらやろうと考えていましたが結局覚えることはなく、第71回は出題もありませんでした。(第70回は3題出題)
獣医法規
使用した参考書
- 特になし
傾向と対策
必須問題のみに出題されますが、必須問題中10/50問(20.0%)と多くの問題が出題されています。
多くの問題は何度も繰り返し出題されている内容についてですが、昨年は少し難しい問題も出題されました。
過去問から繰り返し出題されている内容を洗い出し、不安であれば法規の資料で確認すれば良いと思います。
私の場合は試験の2日前に5年分を解いただけでした。
獣医細菌学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
傾向と対策
出題数は、9/330問(2.7%)と一定数出題されており、多くの分野の土台になっています。
しっかり勉強しておくと他の勉強がとっても楽になります。
他の科目を勉強する前に、各細菌の性状分類と代表的な感染症を覚えることを強くおすすめします。
獣医ウイルス学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
傾向と対策
出題数は、9/330問(2.7%)と一定数出題されているが、純粋にウイルスのみについて聞いているのは数問だけです。
一方で細菌学と同様、しっかり勉強しておくと他の勉強がとっても楽になります。
他の科目を勉強する前に、各ウイルスの性状分類と代表的な感染症を覚えることを強くおすすめします。
獣医放射線学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
傾向と対策
出題数は、9/330問(2.7%)と一定数出題されており、繰り返し出題されている問題も多いです。原理など基本的事項の出題も増えています。
画像診断の際、病気を知らなくても基本原理を理解しておけば解ける問題も少なくないです。
臨床系科目を勉強する前にやっておくとスムーズにできるのでおすすめです。
魚病学(水生動物学)
使用した参考書
- 速攻の魚病(2012完成Version)
傾向と対策
毎年、必須問題で1問、B問題で4問、D問題で2問、の計7/330問(2.1%)は必ず出題されています。難易度は簡単なものが多く、勉強すれば得点できる問題になっています。
ほとんど浅い知識しか問われないですが、疾病数はかなり多いので意外と時間がかかってしまう印象です。
また他の科目との関連性はほとんどないので、後回しで構わないですが必ず対策するべきだと思います。
速攻の魚病は大変よく作られており、内容も面白いので、各科目の息抜きに勉強するのもおすすめです。(魚病学は内容変遷がほぼないので、2012年のものでも問題なかったです)
獣医倫理学
使用した参考書
特になし
傾向と対策
必須問題のみに出題されますが、必須問題中7/50問(14.0%)と多くの問題が出題されています。
ほとんどの問題は文章を読み、最も道徳的な答えれば正解できるので、特別対策をする必要はないです。(そもそもどう対策するべきかわからない)
実験動物学
使用した参考書
- 大学の対策講義
傾向と対策
出題数は数問と少ないですが、毎年出題されています。意外と難易度が高いので、余裕のない方は後回しで良い科目です。
画像問題に関しては、ICLASモニタリングセンター(外部リンク)で実験動物感染症の画像が見れるので、こちらで対策されると良いと思います。
獣医毒性学
使用した参考書
- 北大まとめ
傾向と対策
出題数は数問と少ないですが、毎年出題されています。あまり聞いたことのない内容も出題され、得点しにくいので余裕のない人は後回しで構わないと思います。
勉強するとしても、以下の2つを勉強すれば良いと思います。
- 歴史的な薬害事件・代表的な薬物と副作用
- 毒性試験について(NOAELなどの用語なども押さえる)
生理学、薬理学の発展なので、先にこれらを勉強した後に学習すると勉強を進めやすいかと思います。
家禽疾病学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
傾向と対策
出題数は数問と少ないですが、毎年必ず出題されます。また得点しやすいので勉強しておきたい科目です。
出題範囲の疾病数も数は多くないので、そこまで時間は要しません。先にウイルス学を勉強しておけば覚えることも軽減されるのでおすすめです。
獣医栄養学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
傾向と対策
出題されても数問だけとかなり少ない出題数です。
家畜衛生学、臨床繁殖学、内科学でも扱われる内容が多いですが、余裕があれば栄養学の視点からも1度勉強しておくと良いと思います。
動物行動学
出題数も出ても1問なので、対策しませんでした。
獣医免疫学
使用した参考書
特になし
傾向と対策
出題されても数問だけとかなり少ない出題数です。
出題される内容は、以下の2つです。
- 各ワクチンの特性について
- 何型の免疫反応であるか
この2つに関しては何度も問われているので必ず押さえたいですが、病理内容と重複するのでそちらで勉強されても良いと思います。
獣医発生学
使用した参考書
- 大学の対策講義プリント
傾向と対策
出題されても数問だけとかなり少ない出題数です。
出題される内容は、以下の2つです。
- 何胚葉由来の組織であるか
- 着床の形態について(中心性着床、壁内着床など)
この2つを押さえておけば、十分だと思います。
獣医遺伝学
出題数も出ても1問なので、対策しませんでした。
まとめ
「各科目ごとにどのように勉強したか」について、できる限り書いてみました。
国試勉強のする際の何かヒントになれば、嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
「【2024年】第76回獣医師国家試験の概要とその勉強法ついて考えてみた Vol.1」をまだ読んでいない方は読んでくださいね。
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