獣医師になりたい人・なろうとしている人は、動物が好きだという人がほとんどだと思います。
私自身、獣医師になりたいと思った根本には、”動物が単純に好きだ”という思いがありました。
そう思って、獣医大学に進学し6年間、そして現在、臨床獣医師として働いている今日までに様々なことを経験してきました。
そこで今回は、
- 動物が好きなだけじゃ獣医は辛いかもしれない
と思ったことをお話ししたいと思います。
現在、私は北海道で産業動物獣医師として働いています。
詳しくは、『【プロフィール】就職で北海道に!とんでもない田舎だった…』をお読みください。
獣医大学ではまだ動物実験で動物を殺したりするって本当?
結論から言うと、これは本当です。
獣医学科の専門科目(教養科目ではなく、獣医に関連する獣医学科に在籍する人受ける講義)は基本的に、座学で学んだ後に、実習で学ぶと言うカリキュラムになっています。
専門科目の中でも、最初に学ぶことになる獣医解剖学という科目があります。
獣医解剖学の実習講義でも実際の動物を実習用に解剖することになります。
具体的に言うと、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ニワトリといった動物です。
ウシ、ウマ、ブタなどの家畜動物は、歳を取ったり、生産に向かずに屠畜場に出す家畜を講義用に大学が買い取っていました。
そして、イヌに関しては大学施設で講義用に繁殖したビーグル犬を用いていました。
その他にも、生理学、実験動物学、外科学などの様々な実習で動物を利用することがありました。
今ぱっと思い浮かんだものだけでも、カエル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ニワトリ・・・と様々な動物の命を勉学のために利用させてもらいました。
現在、獣医大学ではなるべく模型などを使う代替法が模索されている
社会的、倫理的にも、現在大学では、できる限り模型などを利用した代替法が模索されています。
しかしまだまだ実際の献体には程遠く、今後も実際の動物を使った講義は行われることになると思います。
もちろんできる限り苦痛を感じない方法で動物が利用されています。
そして、実習でどうしても生きた動物を扱いたくないと言う学生には、配慮がされており、他の方法で単位習得もできるようになっています。
ただ動物は日本の法律ではモノですし、海外と比べても動物倫理の面では遅れているのが現状です。
臨床獣医師になっても助ける命より殺す方が多いかもしれない
そして晴れて獣医師になったとしても、動物を殺さなければならないという事が日常的にあります。
私は現在産業動物獣医師として働いていますが、安楽殺する牛は年間で何十頭といます。
例え、健康な馬であっても、サラブレッドなら走らなければ価値がありません。
例え、治療して生きていたとしても、生産に復帰できない牛に価値はありません。
そして犬や猫の動物病院でも、予後不良の愛玩動物を安楽殺して欲しいとお願いされることもあると思います。
動物の命を助けるというのが獣医師のイメージかもしれませんが、残念ながら獣医になってからも動物と関わる限り、自らの手で動物を殺さなければならないという場面は多々あります。
獣医師になると単に動物を可愛がるだけじゃダメ!責任も伴う
これまで書いてきたように、獣医の道に踏み入れたなら、動物の命と正面から向き合わなければなりません。
動物の命と向き合うと聞こえはいいかもしれませんが、全て治療して病気を治すというだけでなく、安楽殺するということも日常的にあります。
また獣医師になると責任も伴います。
自らの発言、診断、治療、方針が動物の命を左右します。
そして普段、診療している中で、何頭も死んでしまったり、あるいは安楽殺が重なる事があり、気が滅入ってしまいそうになることも正直あります。
勉強すれば獣医になれると思っている人も多いかもしれませんが、そう考えていると大学に入った後、もしくは獣医師になった後で辛く感じたり、思っていたのと違うという風に思うかもしれません。
今でも動物は好きですし、獣医師になって良かったと私は思っていますが、獣医師になりたいという人は少なからずこのようなことは頭に入れておいてください。
少しでも参考になれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
当ブログでは、他にも様々なことを書いているので、是非他の記事もお読みください。